園だより愛光

 

【5月の聖書の言葉】 

       新約聖書 タイによる福音書6章28節

      「野の花がどのように育つのか、注意して見なさい。働きもせず、紡ぎもしない。」

 

                 「月   の   心」

 

イエス・キリストが語られた、よく知られた言葉の一つを5月の聖句に選びました。

 野の花は自分では何もしないけれども、ちゃんと生きていて、きれいな花を咲かせる、その様子をよくご覧なさい、というのです。日々悩み、苦しみ、何かあるとすぐに揺れ動き、つまずき、倒れてしまう弱い人間に、もっと安心してゆったりと生きるように促しておられるのです。野の花と同じように、わたしたちも必ず守られ、生かされ、養われていくのです。わたしたちは謙虚に自らを振り返ることが求められます。

 しかし、イエスが語り、聖書が伝えるこのメッセージは、今の世界の現実には通用しないのではないかとの疑問もあるでしょう。安心して生きよと言われても、そんな呑気なこと言っていられない、実際、争いと摩擦ばかりの世界にあって、ウクライナでもパレスチナのガザでも何の罪もない人々が毎日殺されているではないかと。その通りです。しかし、それにもかかわらず、イエスの言葉を真理として受け止めることが求められます。

 先日亡くなったローマ・カトリック教会の教皇フランシスコは、息を引き取る前日、イースターのミサで格調高いメッセージを語りました。バチカンのホームページで、全文日本語に翻訳されたものを読むことができます。その一部分を引用します。

 「愛は憎しみに打ち勝ちました。光は闇を負かしました。真理は欺瞞を打ち破りました。ゆるしは復讐に勝利しました。悪は歴史から消えることなく、最後まで残るでしょう。しかし、悪はもはや支配せず、この日の恵みを受け入れる者たちに力を及ぼすことはありません。

姉妹たち、兄弟たち、特に悲しみと苦しみの中におられる方々、皆さんの沈黙の叫びは聞き入れられました。皆さんの涙は受け止められ、一滴すら無駄にされませんでした。イエスの受難と死において、神はこの世のすべての悪をご自身に負われました。そして、その無限のいつくしみをもって悪に勝利されました。人の心を毒し、いたるところに暴力と腐敗の種を蒔く、悪魔の傲慢を根絶やしにされました。神の子羊は勝利しました。それゆえに今日わたしたちは高らかに宣言します。「わたしの希望、キリストは復活されました。」

 目の前の現実は、まだ、解決されていなくても、「愛は憎しみに打ち勝ちました。光は闇を負かしました。真理は欺瞞を打ち破りました。ゆるしは復讐に勝利しました。」と教皇フランシスコは語りました。やがて必ずそうなると、未来を先取りして、信じて語っているのです。あの方のいわば遺言です。

 わたしたちも、ちっぽけな野の花であっても、守り、育ててくださる神さまが、わたしたち一人ひとりをきっとお守りくださるのだということを信じて、どんなに違いがあっても、お互いのことを大切にしながら、この難しい時代と社会を生きる一人ひとりでありたいと思います。

 どうぞ、よろしくお願いします。    (牧師・園長 平山正道)

 

 

 

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